糖尿病内科

糖尿病とは

糖尿病とは

糖尿病と聞くと、どんなイメージがあるでしょうか。血糖が高くなる病気・・・放置していると怖い病気・・・そんなイメージでしょうか。
糖尿病とは、「インスリンの作用が十分でないため、ブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が普段より高くなっている状態」のことです(日本糖尿病学会の定義)。
ここでひとつだけ覚えてほしいことは、どんな糖尿病も、『インスリンの作用が十分でない』ことが原因であるということです。

それでは、『インスリンの作用』とはなんでしょうか。
インスリンは、血管の中のブドウ糖(血糖)を、筋肉などの臓器に取り込む仕事をしています。インスリンがしっかり作用していると、食事などで血管内に吸収されたブドウ糖を、インスリンがすみやかに筋肉や臓器へ吸収します。その結果、血管の中のブドウ糖(血糖)はすみやかに下がります。
しかし、インスリンの作用が十分でないと、血管の中のブドウ糖が取り込まれず、血糖値が高い状態が長く続きます。これが糖尿病です。

高血糖は、全身の血管の内側に、微細な傷をつけます。もちろん、体には修復機能がありますから、一度や二度では問題ありません。しかし、毎日の食事や間食で、また傷つけ、体が修復してもまた傷つけ・・・何年もそれを繰り返していると、やがて血管は固くなり(動脈硬化)、最後は詰まってしまいます。
細い血管は、高血糖のダメージをより強く受けます。有名な糖尿病の三大合併症は『糖尿病網膜症』『糖尿病腎症』『糖尿病神経障害』ですが、それは眼や腎臓、神経を取り巻く血管が目に見えないほど細く、糖尿病のダメージを受けやすいからです。
高血糖は、高血圧や脂質異常症とともに、太い血管にもダメージを与え、動脈硬化を進行させます。これらが進行すると、『脳梗塞』や『心筋梗塞』などを起こします。

高血糖によるダメージがまだ軽いうちに、適切な治療を開始することで、糖尿病の合併症の進行を大幅に防ぐことができます。早期治療が良いことはもちろんですが、いつから治療を始めても、遅すぎることは決してありません。
当院では、患者さんの年齢、お体の体組成、罹病期間、合併症の進行具合を見ながら、おひとりひとり、治療はオーダーメイドで行ってまいります。

糖尿病の原因

糖尿病の原因は、先ほどお話ししたように『インスリンの作用が十分でないこと』です。
インスリンの作用が十分でなくなる原因は、大きく分けて4つあります。
そのため、糖尿病は4つに大きく分類されています。

  1. 1型糖尿病
  2. 2型糖尿病
  3. その他の特定の機序、疾患によるもの(二次性糖尿病)
  4. 妊娠糖尿病

1型糖尿病とは

インスリンを作る膵β(ベータ)細胞は、膵臓のランゲルハンス島にあります。1型糖尿病では、このランゲルハンス島に炎症がおこり、インスリンを作る膵β細胞が壊されてしまうことで発症します。炎症が起こる原因はまだはっきりしていませんが、遺伝因子・ウイルス感染・自己免疫などが関与していると考えられています。

発症は突然で、子どもから妊婦、高齢者まで起こります。ほとんどの方で、インスリン治療が必要です。以前は、飲み薬は使用できず、インスリン治療のみでしたが、近年は新薬が開発され、飲み薬も一部使うことができるようになりました。また、インスリンポンプ・SAP療法など、さまざまな新しいデバイスが日々開発され、治療は日進月歩で進化しています(現在、当院でも導入準備中です)。

2型糖尿病とは

40歳以降、健康診断などで発見される糖尿病のほとんどが2型糖尿病で、糖尿病の約90%を占めます。遺伝、加齢、さらに体脂肪率の増加、肥満、運動不足などが重なって、インスリン作用が低下することで起こります(インスリン抵抗性)。
発症初期は、高血糖を抑えるため、膵臓のインスリン分泌は正常~過多が続きますが、徐々に膵臓が疲弊し、インスリン分泌が低下していきます。
インスリン分泌が低下してくる前に、食生活をコントロールし、体脂肪率を下げ、筋肉量を上げてインスリンの効きをよくしていくことが重要です。また、必要最小限のお薬をつかうことで、膵臓を保護し、インスリンの導入を遅らせることができます。

治療の三本柱は、『食事療法』『運動療法』『薬物療法』です。 当院では、糖尿病療養指導のエキスパートである糖尿病専門医、糖尿病認定看護師、管理栄養士がチームで治療をサポートします。

*コラム*

糖尿病の初診でお越しになられる方には、様々な方がおられます。食事・運動だけで何とかしたい方も、薬だけに頼りたくない方も、今は薬で何とかしたい方も、特定のご本や治療法を検討されている方も、まずはご相談いただければと思います。
どのような治療を受けたいかは、検査をして、結果を見てから考えるのがいちばんです。おからだの状態を調べてから、結果を見て、一緒に考えていきましょう。

2型糖尿病の治療のいいところは、発症後数年であれば、何度でも、選びなおしがきくということです。無症状のうちに受診してくださっていれば、たいていの場合、ゆっくり考える時間も、いろいろ試す余裕もあります。そして、一度使ったら一生使わないといけない、という薬は、基本的にはありません。

その他の特定の機序、疾患が原因となる(二次性糖尿病)

他の病気や遺伝子異常、おくすりなどが原因で、糖尿病を発症することがあります。

遺伝子異常による原因

  • 膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常
  • インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常

他の疾患による原因

*リウマチなどの膠原病・自己免疫性疾患などで、ステロイドを長期にわたり使用することで、糖尿病を発症されることがあります。定期的な血液検査をお勧めいたします。
*これらのご病気で、他院へ受診されながら、糖尿病の血糖コントロールのみ、当院でおかかりになりたい方もお受けしています。お気軽にご相談ください。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病妊娠糖尿病と診断されるには、以下の3つを満たすことが必要です。

  1. 妊娠前に、糖尿病と言われたことはない
  2. 妊娠後、はじめて血糖値が高いと指摘された
  3. 血糖値は高いが、糖尿病の診断基準は満たしていない

妊娠すると、妊娠中期までに、主に産婦人科で75gブドウ糖負荷試験を行います。
妊娠糖尿病の血糖の診断基準は、以下の通りです。糖尿病の診断基準より、かなり厳しいことがわかります。この程度の血糖は、妊娠していなければ特にお体に負担をきたすものではありませんが、妊娠の進行や胎児に悪影響があるため、このような基準となっています。

糖負荷試験の診断基準

  空腹時
血糖
負荷後
1時間
食後2時間
妊娠糖尿病 92mg/dl以上 180mg/dl以上 153mg/dl以上
糖尿病 126mg/dl以上 - 200mg/dl以上

(いずれか1点を満たす)

血糖値が糖尿病の診断基準を満たし、さらにHbA1c6.5%以上もしくは糖尿病網膜症を認めた場合、糖尿病と診断されます。その場合は、『妊娠糖尿病』ではなく、『糖尿病合併妊娠』となります。
妊娠糖尿病は、出産後、血糖が正常化することがほとんどですが、糖尿病合併妊娠の場合、出産後も高血糖が持続することが多く、糖尿病の治療が必要になることがあります。

~以下に当てはまる方は、ご注意ください~
  • 妊娠する前からBMI25以上の肥満がある
  • 家族や親戚に糖尿病がある
  • 妊娠してから急に体重が増加した
  • 過去に原因不明の流産、早産がある
  • 35歳以上

晩婚化にともない、最近では、妊婦さんの約1割に妊娠糖尿病があると言われています。また、妊娠糖尿病の方は、その後、糖尿病に進行するリスクがあります。出産後も定期的な受診をすることで、糖尿病が発症しないように整えたり、発症を遅らせたりすることができます。
産婦人科で妊娠糖尿病を指摘された方はもちろん、以前、妊娠糖尿病を指摘されていたものの、その後健診を受けておられない方も、お気軽にご相談ください。

糖尿病の症状

糖尿病の症状には、急性症状と慢性症状があります。
急性症状があるときは、かなり重篤な高血糖が潜んでいることがあります。我慢していると脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともありますので、すぐに医療機関を受診してください。

急性症状
慢性症状

*糖尿病は長年無症状の方もおられますが、平均的には発症後3-5年経つと、上記のような糖尿病神経障害の症状を感じる方が増えてきます。軽くても症状を感じるようになると、血管や臓器のダメージが進んでいますので、無症状のうちに治療を開始しましょう。

糖尿病の合併症

糖尿病で有名な三大合併症は、『神経障害』・『網膜症』・『腎症』です(んけい・んぞうで、『しめじ🍄』と覚えましょう)。神経、眼、腎臓の血管は非常に細く、高血糖の悪影響を受けやすいためです。これらは糖尿病に特徴的な合併症で、他の病気ではみられることがありません。
また、大血管合併症として、『壊疽』、『脳梗塞』、『虚血性心疾患(心筋梗塞)』があります。(そ・うこうそく・ょけつせいしんしっかんで、『えのき🍄』と覚えましょう)。これらは、糖尿病だけではなく、高血圧や、高コレステロール血症からも発症してきます。
いずれも、進行してしまうと、治療法は非常に限られています。

糖尿病性網膜症

高血糖により、眼底の毛細血管が傷つき、詰まったり破れたりすることで、視力障害をきたし、失明することもあります。また、白内障・緑内障の発症リスクも高まります。
糖尿病の治療を早期になさる方が増えたおかげで、少しずつ新規発症は減ってきています。が、それでも日本において、失明原因の第三位です。(1位:緑内障、2位:加齢黄斑変性症)

糖尿病腎症

高血糖により、腎臓の毛細血管が傷つき、詰まることで発症します。初期は、微小アルブミンという、小さなタンパクが尿中に漏れ出すことが特徴ですが、治療をしていないと徐々に尿たんぱくが増えます。やがて足のむくみ、全身のだるさ、息苦しさなどの症状が現れ、透析治療が必要になります。
尿検査で尿タンパクが毎回陽性になってしまうと、数年で透析に進行するリスクが非常に高くなります。また、高血圧がある方は、ない方に比べて腎症の進行が早いです。透析を回避するためには、無症状のうちから血糖や血圧を良好に管理し、尿タンパクを出さないことが非常に重要です。

糖尿病神経障害

高血糖により、感覚神経に栄養を与えている毛細血管が障害されることで発症します。足のつま先のしびれ、ピリピリ感、紙が張り付いたような感覚があり、足先から徐々に広がっていきます。自律神経に障害が出ると、立ち眩み、便秘・下痢、勃起障害などが現れます。
運動神経にはほぼ影響を与えないので、足が動かなくなったり、麻痺することはありません。進行すると、画びょうを踏んでも痛みを感じなくなる方もいます。足の水虫やタコ・魚の目から、気づかないうちに壊疽が進行し、下肢切断になることもあります。

大血管合併症

高血糖は、高血圧、脂質異常症、肥満とならんで、動脈硬化を進行させる因子のひとつでもあります。これらの病気を合わせてお持ちの方は、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが、ひとつだけ持っている人より大幅に高くなります。

*コラム* 死の四重奏deadly quartet? サイレントキラー? 

『死の四重奏』を知っていますか。「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」「内臓脂肪型肥満」 が同時に発症している状態です。これらはお互いに合併しやすく、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こすため、アメリカの医師カプランによってこう名付けられました。
これらのご病気は、別名、サイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれてきました。無症状期間が長く、突然、死に至る病を発症させることがよく分かる名前ですね。

その他の合併症

糖尿病の方は、免疫が低下するため、感染症にかかりやすくなり、また重篤化しやすいです(肺炎、結核、膀胱炎、歯周病など)。また、認知症のリスクも上昇します。

糖尿病の検査

当院では、血糖とHbA1cについて、即日検査が可能です。

問診

問診では、以下の点について、アンケートを用いてていねいにお伺いさせていただきます。

血糖・HbA1c検査

血液検査

血液検査で、血糖値とHbA1cを測定します。これらは検査後10分程で結果出ますので、即日結果が分かります。肝臓・腎臓・インスリン分泌検査なども、あわせて行うことができます(結果後日)。

尿検査

尿糖・尿たんぱくの検査を行います。最近の血糖コントロールの状態や、糖尿病腎症の進行度がわかります。また、尿路感染症や腎炎など、かくれた腎臓や膀胱のご病気も発見できます。

心電図検査

心電図は、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心肥大など、心臓の状態を教えてくれる大切な検査です。定期的に行い、以前のものと比較することで、さまざまな心疾患の早期発見ができます。

血管年齢検査

動脈硬化度を測定する検査です。血管の硬さを測定し、日本人平均データと比較して、その硬さが、日本人平均のだいたい何歳くらいに当たるかを知ることができます。
一度進行すれば、改善は難しいと言われている動脈硬化ですが、食事・運動療法の遵守や、減量に成功された方で、改善していることがありますので、定期的に検査してみましょう。
測定は、両手両足に血圧計のカフをまいて行います。血圧測定のカフ圧の圧迫感があります。測定そのものは、数分で終了します。

腹部超音波検査

肝臓・膵臓・胆のう・腎臓・前立腺など、おなかの臓器の検査ができます。膵がんや膵炎など、膵臓そのものの異常があると、血糖値が高くなりますので、定期的に検査をお勧めしています。そのほか、よく見つかるのは脂肪肝・胆嚢ポリープです。また、糖尿病腎症の進行の有無や、腎性高血圧の有無なども確認できます。
治療が必要な場合、必要に応じて、各専門医へご紹介をさせていただきます。治療終了後、フォローアップは当院でも行うことができます。
※当院の超音波エコー検査は予約検査となります。初診からエコー検査をご希望の方は一度お電話でご相談ください。

頸部超音波検査

大血管合併症である、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが分かる検査です。頸動脈の壁の厚みを超音波検査で直接測定して調べます。糖尿病にかかってから10年以上の方、高血圧や脂質異常症を合併している方、70歳以上の糖尿病の方は、一度は受けた方が良い検査です。大血管の動脈硬化は、非常にゆっくりと進行しますので、ときに、頸動脈が片方すべて詰まってしまっていても、ご本人はまったく無症状のこともあります。
※超音波検査の予約は5月から開始となります。

糖尿病の治療

糖尿病治療の基本は、『食事療法』・『運動療法』・『薬物療法』です。適切なタイミングで、適切な治療を行うことで、糖尿病の合併症の進行を遅らせ、無症状の期間を延ばすことができます。

食事療法

患者さんおひとりおひとりの生活習慣・仕事・睡眠時間・運動習慣などを伺いながら、無理のない指導をさせていただきます。カロリー制限食、糖質制限食、脂質制限食など、型にはまった指導ではなく、ご本人と相談しながら、実行可能な範囲で、現在の食生活から何を引いて何を足すと最も効果が出やすいかを具体的に指導いたします。(たとえばですが、人によっては食事制限はせずに、先に禁煙をお勧めすることもあります)
当院では、経験を積んだ糖尿病認定看護師・管理栄養士が在籍し、院長が公認心理師でもありますので、さまざまな専門家の視点から、精神的に無理がなく、結果につながりやすいアドバイスをいたします。お気軽に、ご相談ください。

運動療法

運動療法は、血糖コントロールの改善に非常に効果的です。運動を定期的に行うことで、筋肉へのブドウ糖取り込みが増え、血糖が下がりやすくなります。また、食後に運動することで食後高血糖(血糖スパイク)をおさえると、動脈硬化の進行予防になります。また、運動を続けて筋肉がつくことで、ブドウ糖の取り込み量が増え、さらに血糖が上がりにくくなったり、太りにくくなります。定期的に運動することで、脳卒中の発症率や死亡リスクも大幅に下げることができます。

ただ、運動療法はご本人が思う以上に、気を付けて、軽い負荷から開始することが大切です。糖尿病と言われて急に運動をはじめ、腰椎椎間板ヘルニア、変形性の膝関節症や股関節症、足底腱膜炎などを発症される方は、思った以上に多いのです。また、医師に止められても自己判断で激しい筋トレを行い、悲しいことに眼底出血による失明や、心筋梗塞などを起こされた方もおられます。
運動療法は非常に価値のある治療法ですが、正しく行わないと、かえって病気を増やし、生活の質を下げてしまいます。開始する前に、必ず全身チェックを行いましょう。その結果に、ご本人の年齢・運動経験・筋肉量を加味して、運動療法のアドバイスをさせていただきます。まずはご相談ください。

薬物療法

食事療法や運動療法と並行して、必要な方にはすみやかに薬物療法を行います。大きく分けて、飲み薬、GLP-1注射、インスリン注射、インスリンポンプ療法があります。

内服薬(経口血糖降下薬)

血糖値を下げる薬剤には、大きく分けて以下の三種があります。

  1. 膵臓のインスリン分泌を促進するお薬(SU薬、グリニド薬)
  2. インスリン作用を改善させるお薬(BG薬、チアゾリジン薬)
  3. 食後高血糖を改善するお薬(αGI阻害薬・SGLT阻害薬)

どのお薬がもっとも適切かは、ご本人の年齢・性別・体脂肪率・筋肉量・食事や運動習慣・合併症の進行度などによります。糖尿病専門医が検査の結果を踏まえ、オーダーメイドでご提案いたします。

GLP-1受容体作動薬

GLP-1は小腸から分泌されるホルモンです。食事をすると、小腸から分泌されたGLP-1が膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進し、血糖値を降下させる働きがあります。GLP-1作動薬は、小腸で分泌されるGLP-1よりも分解されにくく、長期にわたり血中に存在し、膵臓にインスリン分泌をより強力に促すことができます。
飲み薬と注射薬があり、注射薬には週に1回、1日1回、1日2回の3種類があります。患者さんによって相性があり、効果も、副作用も違います。利便性だけでなく、自分のお体に合うものを選ぶことが大切です。

インスリン(注射)

インスリンは、血管内のブドウ糖を体内に吸収し、血糖を下げる働きをしています。インスリンは生命の維持に必須のホルモンです。完全に枯渇すると、血糖が急上昇し、高血糖から死に至ります。

インスリンポンプ療法

近年、インスリンポンプのデバイスが日々進化しています。名刺入れくらいの大きさのポンプから出たチューブを腹部に固定し、インスリンを24時間持続的に注入します。2-3日ごとにインスリンを補充し、場所を変えて固定することが必要です。慣れるのに少しかかりますが、ペン型のインスリンより、血糖コントロールを良好に保つことができます。小児の1型糖尿病の方には積極的にインスリンポンプの導入を行っており、大人が使えないことはないと言っていいでしょう。(当院は現在導入準備中です)

*コラム*

何かとマイナスイメージの強いインスリン治療ですが、インスリン治療ができる時代に生まれたことが、どれほどラッキーかご存じでしょうか。インスリンが発見されたのは1920年代ですが、たった100年前まで、1型糖尿病の治療は『飢餓療法』でした。患者さんは骨と皮にやせ衰えることで血糖上昇をぎりぎりまで防ぎ、それでも命を落としていたのです。インスリンが発見されてから、1型糖尿病は突然、死の病ではなくなったのです。まさに奇跡のお薬の発見でした。インスリンを発見したバンティングとマクラウドは、1923年にノーベル医学賞を受賞しています。今でこそ当たり前に使えるお薬ですが、実は決して当たり前ではないことを、医療者である私たちも、忘れないようにしたいです。

*コラム* お薬だけは飲みたくないんです・・・

食事・運動療法のみで何とかしたい!とおっしゃられる方に、よくお会いいたします。治療は最終的にご自身で選んで決めることですし、ご希望にはできるだけ沿っていきたいと思っております。
ただ、私は、食事・運動療法を行いつつ、早めにお薬を併用し、HbA1cを目標値に到達させてから、薬を減らしていく方をおすすめしています。
理由は、2つあります。1つは、理想はあっても、食事や運動習慣をすみやかに改善できるとは限らないから。しばらく本気で頑張って結果が良くなった方も、気が緩んだり、仕事が忙しくなってやめてしまい、かえって合併症が進んでしまうケースが多いからです。

2つは、合併症の進行をいちはやく止めてあげることが、お薬を飲みたくない方には、ほんとうはとても大切なことだから。食事・運動を頑張っても、血糖コントロールが目標を達成していなければ、その間にも合併症は進行していきます。合併症が出てしまうと、薬の数も種類も、糖尿病だけのときとはくらべものになりません。

糖尿病が重症かどうかは、薬の数や種類でははかれません。合併症が、どれだけ進行しているかです。食事や運動に加えて、内服薬もインスリンも使っている、HbA1c6%の方。食事と運動だけで頑張っている、HbA1c8%の方。10年後、合併症が進行してしまうのは、どちらでしょうか?

診療科目
糖尿病内科/循環器内科/甲状腺・内分泌内科/一般内科/睡眠時無呼吸症候群(いびき外来)/不眠症・心身症外来/予防接種/健康診断・特定健診
  • 〒120-0026 東京都足立区千住旭町40-27 トラヤビル3階
  • TEL:03-6806-1521
診療時間 日・祝
9:00~13:00 ●★
15:00~18:00

循環器内科専門医による外来あり

※受付時間:診療終了時間の30分前まで(予約の方を除く)
休診日…水曜午後・土曜午後・日曜・祝日

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