甲状腺・内分泌内科

内分泌内科について

内分泌疾患について内分泌内科と聞いても、あまりピンとこない方が多いかもしれません。内分泌とは、私たちの体の中で、さまざまな臓器から、血中に直接分泌されているホルモンのことです。内分泌ホルモンは、下垂体、甲状腺、副腎、卵巣、精巣、肝臓、心臓、膵臓、腎臓など、さまざまな臓器から分泌されています。内分泌内科は、これらのホルモンが過不足をきたすことによって起きる病気を診察しています。

内分泌内科のうち、甲状腺疾患は、日本に500~700万人の患者さんがいると言われています。そのうち、治療が必要な方は約240万人と言われていますが、実際に治療を受けているのは2割弱で、多くの患者さんが、気づかずに放置しているのが現状です。

その一番大きな理由として、甲状腺のご病気は、症状があまり特徴的ではないことがあげられます。たとえば、よくあるご症状は、疲れやすさ、足のむくみ、動悸、イライラや不眠……などですが、これらの症状から、内分泌内科に行こう!と思ってくださる人は少ないのではないでしょうか。実際に、多くの方は、更年期障害と思って産婦人科へ、動悸や足のむくみで循環器内科へ、またイライラや不眠が気になって心療内科を受診し、そこからご紹介を受けて、まわり回って当科にお越しになるケースが多いように思います。

甲状腺がご心配な方は、まずはお気軽にご相談ください。

主な疾患について

甲状腺とは

甲状腺は、のどぼとけの下に位置する、蝶ネクタイのような形をした臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは、代謝を活発化したり、成長を促進する働きをします。下垂体より分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。

甲状腺疾患

甲状腺中毒症

甲状腺中毒症とは、血中の甲状腺ホルモンの量が過剰になった状態です。主なものに「甲状腺機能亢進症」と、「破壊性甲状腺炎」があります。
症状には、暑がり・汗かき・食欲亢進・やせ・手のふるえ・イライラ・下痢・どうき・疲れやすさ・息切れなどがあります。

甲状腺機能亢進症 

甲状腺で、甲状腺ホルモンが多く作られすぎる状態のことです。よく見つかるものとしては、バセドウ病、機能性甲状腺結節、TSH産生(下垂体)腫瘍、妊娠性一過性甲状腺機能亢進症などがあります。

① バセドウ病

自己免疫疾患の一つです。甲状腺刺激抗体が、甲状腺のTSH受容体を持続的に刺激することによって、甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。

② 機能性甲状腺結節・腺腫様甲状腺腫

甲状腺内に結節ができ、その結節からTSH濃度と関係なく甲状腺ホルモンが自律的に分泌されます。以前は手術をよく行っていましたが、最近は表面から針を刺して腫瘍内にエタノールを注入して腫瘍を壊死させる、PEIT(percutaneous ethanol injection therapy)という治療が行われることがあります。

③ TSH産生下垂体腫瘍

下垂体にTSHを自律的に産生する腫瘍ができることで、TSHと甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまう病気です。100万人に2-3人のご病気で、難病に指定されています。治療は手術で、約75%の患者さんが治癒します。手術ができない場合、または手術で完全に取り切れない場合は、ガンマナイフという放射線治療を行うことがあります。

④ 妊娠性一過性甲状腺機能亢進症

妊娠の初期(8-13週)に一過性におこる甲状腺機能亢進症です。胎盤から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に甲状腺刺激作用があるため、一時的に甲状腺ホルモンの産生が過剰になります。
妊婦さんの3%程度で起こります。本当にバセドウ病を発症していることもあるので、注意しながら慎重に経過を見ていきます。あまりに症状が強い場合は内服薬を使用することもあります。糖尿病を合併されている方は、妊娠後期に起きることもあります。

甲状腺の破壊によるもの

破壊性甲状腺炎

慢性甲状腺炎などで甲状腺の破壊がおこることで、甲状腺の中に貯蔵されていたホルモンが血中へ放出され、甲状腺ホルモン濃度が急に上がることがあります。甲状腺が徐々に壊れて痛みがない『無痛性甲状腺炎』と、痛みや発熱を伴う『亜急性甲状腺炎』があります。多くの場合、数か月で自然軽快します。

その他

甲状腺ホルモンの過剰摂取

甲状腺ホルモンは代謝を亢進するため、やせ薬などにひそかに混入されることがあります。
国内の承認を受けていない、海外の薬品を直接輸入した際などに健康被害が起きていることがあります。くれぐれもご注意ください。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症には、甲状腺そのものの働きが低下し、甲状腺ホルモンが不足する場合(原発性甲状腺機能低下症)と、甲状腺ホルモンを分泌する指令を出す下垂体や視床下部に異常が生じ、その結果甲状腺ホルモンが低下してしまう場合(中枢性甲状腺機能低下症)があります。
甲状腺ホルモンが低下すると、さまざまな症状を引き起こします。症状には、疲れやすさ、むくみ、皮膚の乾燥、体重の増加、便秘、無気力、月経異常、脱毛などがあります。

① 原発性甲状腺機能低下症
  • 橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病は自己免疫疾患の一つで、非常にのど前面の腫れや違和感を感じることがあります。上のようなご症状に加えて、徐脈、心肥大、うつ状態などが起きることもあります。首の不快感や圧迫感を感じることもあります。血液検査では、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体などの自己抗体が陽性となります。

② 中枢性甲状腺機能低下症

脳腫瘍、脳膿瘍、くも膜下出血後、脳外科手術後などに、下垂体や視床下部にダメージが残ってTSHを十分分泌できなくなり、甲状腺機能低下症を発症することがあります。また、自己免疫性下垂体炎など、下垂体そのもののご病気によることもあります。

③ その他

ヨードを過剰に摂取することにより、甲状腺機能低下症をきたすことがあります(昆布、わかめ、海苔、ヨード強化卵、ヨウ素(ヨード)の入ったうがい液など)。また、甲状腺の手術や、甲状腺周囲に放射線治療などを行った場合も、甲状腺機能低下症になりやすくなります。

甲状腺腫瘍

甲状腺のエコー検査を行うと、3-4人に1人は、何らかの腫瘍や嚢胞が指摘されます。橋本病やバセドウ病に罹患していると、甲状腺の破壊や変性が繰り返され、甲状腺に結節を作ります。結節が1㎝以上あれば、穿刺細胞診を行い、がんが隠れていないか確認する必要があります。

また、濾胞性腫瘍は、穿刺細胞診を行っても、がんとの鑑別が難しくなっています。3㎝以上あれば、手術が積極的に検討されますが、そこまで大きくない場合は、腫瘍の増大傾向や、採血でのサイログロブリン値を見ながら、悪性の可能性がないか、慎重にフォローアップする必要があります。

当院の甲状腺外来について

対象となる方


以下の症状がある場合は、一度当院を受診してみてください。

  • 喉(首前方部)の腫れ・違和感・しこりを感じる
  • 動悸・疲れやすさ・イライラ感・むくみ・手のふるえなどの症状がある
  • 健康診断や採血で、甲状腺ホルモンに異常があると言われた
  • 眼が突出してきた気がする
  • 家族に甲状腺のご病気の方がいる

甲状腺の検査について

甲状腺ホルモン検査(甲状腺機能検査)

問診でご症状などをお伺いしながら、血液検査で、甲状腺ホルモンやTSH、また必要に応じて甲状腺自己抗体などを測定いたします。甲状腺ホルモンの数値に異常が見られる場合は、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症などが疑われます。

甲状腺超音波検査

甲状腺の大きさや腫瘍の有無などを調べるために、甲状腺超音波検査を行っております。所要時間は、約10分です。検査用ゼリーを首全体に塗りますため、首周りを開くことができる服装でお越しください。
※当院の超音波検査は、現在、月・木・金で行っています(月曜午後は2・4週のみ)。初診からエコー検査をご希望の方は、いちどお電話でご相談ください。

甲状腺の治療について

甲状腺機能亢進症の治療

甲状腺機能亢進症は、主に薬物療法で行います。多くの方は薬物療法のみで安定して経過されますが、再発もしやすいため、超音波検査や血液検査によるフォローアップが必要です。骨粗しょう症が起こりやすいため、当院では合わせて検査が可能です。

薬物療法を用いても十分な改善が見込めない場合には、放射性ヨード治療や、手術治療が必要となります。その場合は、総合病院へのご紹介をさせていただきます。

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症には、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。また、定期的に甲状腺ホルモンを測定し、適切な範囲に保たれているか確認します。橋本病はシェーグレン症候群や心嚢水貯留などの合併症をきたすことがあるため、症状をおうかがいしながら、合併症の検査もあわせて行っていきます。

甲状腺腫瘍の治療

甲状腺腫瘍が見つかった場合、結節が1㎝以上あれば、穿刺細胞診を行い、がんが隠れていないか確認する必要があります。

当院では、穿刺細胞診は行っておりませんそのため、1㎝以上の甲状腺の腫瘍が初めて見つかった方や、以前の病院で測定されたものより明らかに大きくなっている場合、穿刺細胞診を行うことができる病院へのご紹介が必要です。(紹介先で穿刺細胞診を行うかどうかは、紹介先病院の先生のご判断になります。あらかじめご了承ください。)

すでに1㎝以上の甲状腺腫瘍が見つかっており、まだ穿刺などの精査をされていない方は、穿刺細胞診を行っている甲状腺クリニックへの受診をお勧めいたします。
もちろん、ご相談に来ていただくことは問題ございません。
現状を確認するために超音波検査を行い、必要に応じて紹介状など制作させていただきます。ただ、紹介先の病院で、あらためて同じ検査を受ける可能性がありますので、ご了承ください。

骨粗しょう症

骨粗鬆症とは、骨量が減少し、骨組織の構造がもろくなることにより、骨折しやすくなる病気です。老化、運動不足、カルシウムなどの栄養不足、喫煙、閉経(女性の場合)などが、骨粗しょう症のリスクとして知られています。
日本における骨粗しょう症の患者さんは1280万人と言われています。骨粗しょう症と言われると、あわてて整形外科を受診される方が多いですが、実は内分泌の病気です。骨の新陳代謝をうながすホルモンのアンバランスによって生じます。
骨粗しょう症は、糖尿病と同様、治療には普段の生活管理が非常に重要です。薬物療法によるホルモンバランスの調節を行いつつ、食事療法、運動療法を丁寧に行うことで、骨折リスクをおおはばに下げることができます。
骨密度を測ったことがないという方、気になっている方はいつでもお越しください。まずは現在の骨年齢を知り、必要に応じて治療を進めていきましょう。

骨粗鬆症の検査方法

骨密度検査当院では、X線を用いて手の骨を撮影し、速やかに骨密度の測定が可能です。結果が出るまで10分程度ですので、ご希望の方は、検査を行った日に結果を聞くことができます。

骨粗鬆症の治療について

食事療法・運動療法の指導を行っていきます。また、骨粗しょう症の進行が強い場合は、薬物療法を合わせて開始します。ビスフォスフォネート製剤、活性型ビタミンD3製剤、エストロゲン製剤、副甲状腺ホルモン製剤などを、ご本人の状態に応じて選択していきます。

骨粗しょう症の改善には、年単位のお時間がかかります。骨密度が下がりすぎる前に、早めに治療を始め、気長に続けるのが何よりも大切です。きちんと服薬をし続けることで、高い骨折防止効果が期待できます。一緒に頑張っていきましょう。

副腎・下垂体疾患の検査・治療について

副腎や下垂体疾患につきましては、入院による精密検査や、定期的にMRI/CTなどの画像診断が必要になることが多いため、当院では治療をおこなっておりません。
もちろん、ご相談に来ていただくことは問題ございません。基本的な血液検査や、画像検査(連携医療機関で)を行うことは可能です。結果によって、総合病院の内分泌内科へのご紹介状も準備させていただきます。
お気軽に、ご相談いただければと思います。

診療科目
糖尿病内科/循環器内科/甲状腺・内分泌内科/一般内科/睡眠時無呼吸症候群(いびき外来)/不眠症・心身症外来/予防接種/健康診断・特定健診
  • 〒120-0026 東京都足立区千住旭町40-27 トラヤビル3階
  • TEL:03-6806-1521
診療時間 日・祝
9:00~13:00 ●★
15:00~18:00

循環器内科専門医による外来あり

※受付時間:診療終了時間の30分前まで(予約の方を除く)
休診日…水曜午後・土曜午後・日曜・祝日

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